「片付けておけ。」
岩鉄和尚が私にそう言い捨てて、本堂を出ていった。
朝の修行を終えて、これから畑仕事に出るのだろう。
和尚が立ち去り、しんとした本堂で、私は床に這いつくばった。
先ほどまで和尚のでかい尻が乗っかっていた座布団に顔を近づけ、鼻を押し当てる。
「うっ、くせ…!」
まだ少し、尻の温もりが残る座布団。
その真ん中に、岩鉄和尚の尻の、いや、糞の匂いがある。
ぷーんと、とても臭い。
「くせえ…岩鉄和尚、好きだ…くっせえ…。」
私は犬のようにくんくんと鼻を鳴らして、和尚の臭い座布団を嗅ぎ回る。
これが私の、日課の始まりだ。
大柄な岩鉄和尚が座ったところはいつも、愛おしいほど臭い。
三度の飯を終えて立ち上がった後の座布団も、必ず嗅ぐ。
奥さんがしていた洗濯も、弟子入りしてすぐに買って出た。
3日に1度しか取り替えない和尚の褌には、決まって糞がこびりついている。
汚れた褌を手持ちの古いのとすり替える。
岩鉄和尚の臭い褌を毎日袂に忍ばせておき、誰も居ないときに取り出して嗅ぐ。
これも私の日課だ。
岩鉄和尚は、私に対していろいろと厳しい。
修行中の姿勢や動作から、畑の作り方、風呂のたき方、箸の持ち方まで。
何度も殴られた。とにかく頑固でおっかない親父様だ。
もちろん、この禅寺を守る立派なお方なのだから、弟子に厳しいのは当たり前である。
なにしろ、ここの村で最も敬われている男の一人なのだ。
しかし、自分のこと、特に修行以外のこととなると、なにかと甘い。
大食らいの大男で、肉も酒も食らう生臭坊主。
風呂も面倒くさがり、尻もちゃんと拭かない。だから、尻が臭い。
それだけでなく、和尚は「豆いじり」がたいそう好きだ。
岩鉄和尚には、五歳年下の妻が居る。
珍しいというか、村の人たちもあまり口にしたがらないことだった。
その奥さんの豆いじりを、和尚は毎夜欠かさない。
今年四十八になったとは思えない腰の強さで、ばんばんばんばんと奥さんを突く。
半時も突きまくった頃、熊のように吠えて、ようやく精を放つ。
色欲にのめり込む和尚の一部始終を、物陰からのぞく。親父様の臭い褌を嗅ぎながら。
これも私の大事な日課だ。
「岩鉄」という名に反して、快楽にはめっぽう弱い和尚なのだ。
私が弟子入りを果たしたのは2年前、十六のとき。
あちこち奉公に出ていたのだが、どうしても自分の村の和尚様が忘れられず、弟子入りを自ら願い出た。
ちょうど一人息子がほかの寺に弟子入りして、跡取りを探していたところだった。
岩鉄和尚のでかい尻をねぶりたい。
その邪念一心でこの寺に住み込みを始めたとは、誰一人、知る由もない。
私と岩鉄和尚の、臭い、汚い、そして淫らな毎日を、密かに綴っていきたいと思う。