「うちのホテルでもここのスイートだけはトイレの造りが変わってましてね。少しでもお客様にご不便のないよう、設備を工夫しているんです。」
「…便器に水が張ってない気がするが?」
初めて見たというふうにけげんな顔で中をのぞき込むアフリカ系紳士。その尻は大きく、年の割にスーツズボンの中で楕円の双肉がそれぞれきゅっと上に上がっているのがよく分かる。やはり、黒人の尻はでかくてグラマラスだな。
「これは水が溜まってなくてもちゃんと流れます。お尻に汚い水が跳ね返らないようにこうなっているのです。
流すときは蓋をロックしてから“大”か“小”のボタンを押してください。蓋が開いているとジェット水流で汚い物が跳ね返る可能性があるので、ロックしないと流れないようになっています。」
「…すごいな。私はいっさい汚い思いをせずに済むというわけだ…。」
「ええ。まあ、お尻のほうはご自身で拭いていただくしかないのですが。」
紳士はそれを聞いてさも楽しげに大声で笑った。そして、私に聞き取れないようになのか、ぼそぼそっと早口で「それが最も汚らしい問題だ。」と言って便座の蓋を閉めた。
それから、くるりと後ろを見た紳士は壁に日本画入りのカレンダーがはめ込まれていることに気がついて、Wow、と感銘の声を上げた。
「富士山です。便座に座りながらゆっくり鑑賞していただける高さに配置してあります。」
「グレート。きれいですね。ちょっと見ていてもいいかな?」
そう言って長官は閉めたばかりの蓋の上にどかっと腰を下ろしてしまった。尻の重みにぎしぎしと便座がきしむ。
顎に手を当てながら墨で描かれた富士と桜の景色に見入る厳つい大男。
これはちょうどいい。私は失礼しますといった丁寧な態度で頭を下げて1坪サイズの広いトイレから静かに立ち去り、寝室に入るとすぐに先ほどまでブラウン長官が座っていた椅子に近づき、すっとしゃがみ込んだ。
(どれ、匂いはどうかな?)
エンジ色のクッションの中央から手前側に鼻を埋めて嗅ぐ。
(うっ…!)
鼻の中に、ぷーんと明らかに臭いギンナンのような匂いが流れ込んできた。座って5分も経ってなかったはずなのに。臭い…。
体のでかい黒人だし、日本と違ってウォシュレットも使わないだろうから臭そうな尻だとは思っていたが。ブラウン国防長官の尻は結構臭い。
エンジのクッションには体臭とムスクの香水の入り混じった深い加齢臭の残り香も付いてはいるのだが、尻の穴のところだけ黄色っぽい色の臭い煙が出ているイメージだ。この鋭いギンナン臭からすると、黒人さんは軟便体質なのかな?
玉の裏の上端の座面にとても臭い箇所を発見。ここがずばりブラウンのケツの穴だ。くせえ、くせえ。丸一日、長時間シャワーも浴びずに乗り物で移動してきたのだ。尻の重みでケツ穴がパンツにぴったりとくっついていたのだから臭いのも無理はないし、二つとも分厚い楕円の筋肉が寄せて合わさったでっかい尻は立っているだけでもパンツ内がよけい蒸れる要因そのものだ。
それにしても不潔なケツの穴だ。きっと穴の周りに糞が付いているに違いない。国防長官にもなって恥ずかしいなあ。それとも、67歳にもなってのほうが恥ずかしい?いやいや、どっちもか。
トイレでは当のアメリカ人がもう5分もカレンダーの絵に見とれている。私はその時間を利用して67歳の国防長官の恥ずかしい尻の匂いを堪能した。とても臭い尻の穴だということがよく分かった。
ようやく咳払いが聞こえたので臭い椅子から顔を上げてトイレの様子を見に行くと、ブラウン長官の硬かった表情がだいぶ柔らかいものになっていた。
「私はきれいなものが好きなんですよ。」
ケツが汚いから、そうじゃないものに憧れるってことか?
「この絵を眺めているととても落ち着く。トイレの時間が楽しみになりそうだ。」
立ち上がった長官はのしのしと洗面所のある別室のほうへ歩いていってしまった。本来なら間を置かずに後を追うべきなのだが、その前に。
(うぐっ…!)
便座の蓋の中央から手前側に当てた鼻の中に、これまた臭いギンナン臭が流れ込んできた。クッションの柔らかい材質とは違うプラスチックの硬さのためか、黄色っぽい色の臭い煙はより強く、直接的でかつ攻撃的な領域の臭みになっている。
玉の裏の上のへり、ケツの穴の位置もさっきと全く同じところだ。そこが、すごく臭い。ここにだって5分しか座ってないのに。ムスクの香水も意味なし。体臭は隠せてもケツ穴臭は隠せず、だな。
洗ってないケツの穴はおそらく糞と汗でぬるついているのだろう。プラスチックの平面にそのエロい穴が当たった印のぷわーんと恥ずかしい匂いがしっかりと移っている。この尻臭軍人め。
紳士は洗面所でなにやら水をひねり顔でも洗っている様子。私はその時間を利用して、67歳の国防長官のケツの穴の匂いをまたも5分ほど堪能した。彼の尻は疑いようもなく臭いということがよく分かった。