「熊田さんって最高だよね。」
私の明るいコールを受けて「ぐはははは!」と中央のコースに躍り出ていったドラグール大王を見ながら剛くんが暗い声で言った。
これから平泳ぎのやり方をみんなの前でレクチャーする大王は、90kg級の大きな体を全員に見てもらえるように、ぐるぐるとオーバーな動きで毛深い腕と肩を回し豪快に振る舞っていたが、お尻はあまり見せないようにしていた。
ついさっきまで穴に手を入れられていたのだ。昼飯後のウンコを我慢している穴に、腕まで突っ込まれていたのだ。
しっぽが邪魔して水着を満足に確認できない熊田さんは、自分の後ろが今どんな状態になっているのか不安なのだろう。それでも、ドラグールの威厳ある振る舞いで精一杯に堂々と子どもたちの注意を引いている。
もちろん、剛くんはそんな威厳ある大王のことが最高だとは言っていない。
臭いお尻の穴に指を何本でも入れさせてくれる熊田さん、手を無理矢理入れても耐えてくれる熊田さん、どんどん腕を入れられて重いうめき声をこらえきれない熊田さん、腸液とウンコまみれになった手を尻の穴から一気に抜かれて変な屁を漏らす熊田さん、すごく臭い内臓臭をそこら一帯にまき散らす熊田さん。
そうした全く威厳のない熊田さんが最高だと言っているのだ。
「臭かったね、さっきの内臓みたいな匂い。でも、あんまりやると熊田さんのお尻壊れちゃうよ。」
「まだ大丈夫だよ。手を入れても中に余裕あったし。腸が太いのかも。ウンコも結構太かった。」
直接確かめたのだから間違いはないのかもしれない。あのぶりんぶりんと揺れるでかい尻の中にまたも極太のウンコが…。
「ドラグールは手本の平泳ぎを3回やるんだ。1回目の今は穴をほじくられすぎて出来た水着のウンジミを見学しよう。
2回目は、このストローで空気を入れて、仕掛けで丸出しになった穴から屁がジェット噴射するところを見よう。」
ストローを受け取りながら、「3回目は?」と剛くんが聞く。私はにやりと悪い笑みを浮かべて、少年の待ち望む答えを返した。
「3回目は、空気も水も入れてウンコも直前まで引きずり出して泳がせるんだ。開きっぱなしの穴から屁と水とウンコが出ちゃうよ。仕掛けで穴丸出しだから、熊田さん、プールにウンコする。」
「見たい、俺すげえ見たい。」
「じゃあ、ドラグールが出番を待つ間、お尻の準備手伝わないとね。」
「僕がやる。僕ならドラグールもやらせてくれるよ。僕の手ならすぐ入るからウンコも引っ張って出せるし。柏木先生は僕が見つからないようにして。」
「オッケ。」
興奮するあまり、いつものようにカッコつけるのも忘れて“僕”を連発する男児に、私はにっこりと笑いかけた。その私でさえ、これから起こることに興奮しきっているのだから剛くんのことは何も言えない。
「いいかあ、ビート板の子たちもお尻は上げすぎないようにな!足で真後ろを蹴るんだぞお。高学年の子は手を広げすぎないように水をかいてみよう。こうだ!」
そう説明して水中に潜ったドラグール大王の泳ぎは、お世辞にもあまり上手ではなかった。
まあ、人の姿をしていても牙やしっぽが突き出ているし、そもそも私の作った水着は水泳用の生地ではない。それに、熊田さんは相撲は得意でも泳ぎは苦手そうだった。
最初はなんとか足を後ろに蹴っているのだが、だんだん股が開いてきて、メロンのような二つの大きなお尻が水の上にぐっと浮いてくる。水に濡れたサテンの生地が広大な山にべったりと張り付く中年男子の逞しい尻のラインは生唾が出るほどエロい。
「ははは、難しいなあ!最初のほうを真似してくれよ、じゃもう一回だ!」
ぐはは笑いも忘れて少し赤面するドラグールおじさんが、みんなのために一生懸命手本を示す。スイミングに通うくらいの子も含め泳ぎが得意な児童はたくさん居たが、子どもたちはきゃあきゃあと喜び、頑張ってー、カッコいいーと応援していた。
なにしろ、テレビで見るドラグール大王が目の前で泳いでいるだけで楽しいのだ。スイミングや学校で聞くきれいな泳ぎのテクニックにはちょっと飽きている子どもたち。ドラグール大王の牙がしっぽが水中からひょこひょこ飛び出る光景を見るほうが断然楽しく貴重なのである。
その飛び出たしっぽの下が、見事に茶色だ。尻が水の上に上がったときに、かなりはっきり谷間が見える。水中に溶け出しているとはいえ、親父のウン汁はしつこく黒ブリーフの割れ目に恥ずかしいシミを広げていた。
みんな金色に縁取られたカッコいいしっぽにばかり目が行く。が、剛くんだけは大人の太い足の動きに合わせてぱくぱくする割れ目の“後ろ暗い”奥を楽しそうに見学していた。
「しっぽよりウンジミのほうが絶対カッコいい。臭そう。」
同感だ。しっぽはあんなにゴツくて威厳の象徴みたいなドラグール大王のトレードマークなのに、根元にある汚れた割れ目はすごく臭そうだった。ウンコのシミも英語で何とかマークって言っていたな、後で辞書で調べてみよう。
熊田さんは不器用ながらみんなのために足の蹴り方を教えるべく、全員に黒いお尻を見せて泳いでいた。水にパンツがぐっしょり浸かっても、浮いてくるデカ尻には真ん中に茶色のシミが目立っていた。誰もウンコだとは思わないし、そう思うようなプライベート空間ではないが、あれはウンコだ。ドラグールさんのケツ、きたねえなあ。
1回目のレクチャーを無事終えて熊田さんが戻ってきた。私は剛くんが熊田さんの尻をいいように責める密室を作るために、明るい声を張り上げた。
「ドラグール大王に拍手うー!これから皆さんにもコースを泳いでもらいます。
まずは片道だけやります。私と大王が待ってますので向こう側まで泳いできてください。タイムを計りますからアシスタントは剛くんにお願いしたいと思います。」
私の計略を察知して「はーい!」と軽くOKする剛くん。そして、二人と1匹は連れ立って25m先の壁まで歩いていった。
「浅いから結構泳ぎにくかったでしょう?」
「なんの、平気です。ちょっとお尻が何回も浮いてしまいましたけど、この体型なりに小回りを利かせました。ははは。」
体の大きな熊田さんが太腿の馬力で交互に水をぐいっぐいっと押し分けながら楽しそうに冗談めかす。
「しっぽ、カッコよかったよ。」
剛くんがさらりと言った一言に気を良くしたらしく、「そうかそうか。」とさっき与えられた責め苦など忘れてしまったかのように満面の笑顔だ。私も一瞬勘違いしたように、やっぱり普通の子だな、と彼も思い直していそうだ。
プールの隅に到着すると、無邪気な少年はみんなからの視線が恥ずかしいからといったていでドラグール大王の後ろに隠れた。まだ3年生くらいならどの子にも見られる、ごく普通の態度だった。
ぐちゅぐちゅ、みちみちみち。
「ぐっ…うっ…。」
「太いウンコ、ちゃんと腸の中に我慢してあるね。偉いよ熊田さん。」
もう手を入れたらしい。タイマーを渡すふりをしてドラグールの尻をのぞくと、腕が突っ込まれていた。私はコースの向こう側で平泳ぎの計測に備える一番手の男児に向かって優しく声をかけた。
「泳ぎ方が大事ですから、タイムは気にしないでゆっくり自分のペースでいいですよー!時間はたっぷりありますからねー!用意!スタート!」
みちみちみちみち、ぐちゅぐちゅぐちゅ。