週に1度の定例会議がやってきた。
午前11時前。会議室に入ると、いつも荒熊部長が出入りしているためか、ちょっと臭い親父の匂いがしてる。その荒熊部長は、たぶんわざと、出席者が全員集まったほぼ11時に忙しそうにどかどかと入室してきた。
「すまないね、遅くなって。で、今日の議題は何だったかね?」
ここのところ、部長の定位置は僕の隣。二人が示し合わせたわけじゃなく、ほかの先輩たちがむしろ荒熊部長を嫌がって見えない陣取りをやっているうちに今の状況になったという感じ。
体のでかい親父がどすんと椅子に腰掛けると、デブケツの圧力に押しつぶされた空気がぶわっと周囲に流れ出す。僕のほうにも、53歳の臭いケツの匂いが流れてきた。
まだ午前中なのに。今日も洗ってないのか…。ま、いつものことだけど。夢の中ですらね。僕の頭は昨晩の夢で見た、荒熊部長の臭いケツが無防備に丸出しでぶら下がる松の木を思い出していた。
あのでかいケツ、また抱きつきたい。ウンコ臭くてでっかいケツ、割れ目も穴もなめまくりたい。あーあ、早く夜になんないかな。
「勝呂。これは、何だね。」
僕がぼうっと臭い考え事をしてると隣の荒熊部長に腕を小突かれた。太い指で不器用そうにめくる資料を見て、僕の背中にさあっと寒い物が駆けていく。
頼まれたコピーの、ページが1枚飛んでいた。見出しに2-AとかA-2とか並んでて、間違えそうだなと思ってたのに間違えたんだ…。
暗い表情になっていく僕の顔を見て取った荒熊部長が、ふふんと勝ち誇ったように鼻で笑った。
「落ちたページを、探してきてくれるかな?」
「は、はい!すみません、部長…。」
出席者も気づき始めて、僕は逃げるように会議室を出てコピー機に向かった。ふう、何事もなくて、よかった…。
…えっ、何事も?そうだ…、ほかの職場ならもっと増しなんだろうけど、うちの場合、ああいう局面で荒熊部長が社員を公然とこけにするのが普通だ。定例会議は荒熊岩雄のストレス発散の場として定例の会議、だとさえ陰では言われている。
けど、今朝の部長、なんか、…優しかった?ま、元気ないだけかもな。53歳だし、中年だから疲れてて、ケツも臭くなっちゃうくらいだから、ふふ、やっぱ中年の豚親父って最高だな。
僕は少し気分を上げてコピー機での作業を終えた。うん、全員分あるぞ。資料を持って早く戻れば、荒熊部長の鼻息が荒くなることもないだろう。
そういえば、「落ちたページ」って言っていたのも珍しかったよな。あそこはいつもなら「君が落としたページ」とか、もっとひどい言い方になるところ…。
穏やかな午前だと思っていたら、嵐は結局午後一でやってきた。僕の真上に。
「こおらああ!勝呂おぉぉぉぉ!いったい君は何のために会社に…!」
「すみません!すみません!」
実際、荒熊部長の粗探しで怒られることもしょっちゅうだが、今回は僕がほんとに悪かった。取引先に送っておかないといけないメールを忘れていたんだ。最低だ…。
「君ね、メモは取っているのかね?」
「は、はい…。ただ、その、メモを見るタイミングを逃したりはしていまして…。」
豚の潰れた鼻がぶくうっと膨らんだ。それから、きょろきょろと周りを見回して、がたっと巨体を立ち上がらせた。
少し匂うケツの後ろについていくと、できる女子先輩のデスクまで来た荒熊部長は、彼女のPCの画面を指差しながら言った。
「こういう付箋みたいなのを画面上に貼ったらいいだろう?私はよく知らんが、君、勝呂に少しやり方を教えてやってくれないか。」
どすどすと戻っていく部長のデカケツをぼうっと眺める。ひょっとして部長、僕があまりにできなさすぎて、お父さんモードに切り替えたとか?こんな安心感のある展開になったこと、今までなかったよな…。
一通り教わって自分のPCで試した後、トイレに行くと荒熊部長が居た。僕も隣の小便器に並ぶ。
「荒熊部長。先ほどはご指導ありがとうございました。」
豚熊は、ふんと勝ち誇ったように鼻で笑った。そのあと、小さな声だったが「構わんよ。」と言った。
「さっき私から先方に電話しておいた。君は仕事に集中しなさい。」
「はい。」
よどみなく答えていた僕。なんか、頼りがいあるなあ。カッコよくないか?部長って、カッコいいんじゃないか?
僕がちらと小便器の隣をのぞくと、荒熊部長はさっと大きな手で股間を隠した。手は確かに大きいけど、玉の辺りまで完全に隠れる股間って…。しかもすごい瞬発力。
えっ、えっ、まさか、ポークビッツなの?小指の第二関節までしかないの?
他人の視線に気を取られて、豚熊は黄色い小便をズボンと手にかけてしまった。あっと慌てた部長だったが、いつもあることなのか、さっさとジッパーを上げると自分の小便で汚れた手を洗いに行った。
無言で洗面所に立つ中年親父のずんぐりむっくりした体。幅広のスーツにみしっと収まっている脇腹の肉、背中の肉。そして、ズボンに収まっているとは言いがたい丸々と太ったでかいケツの肉。
ズボンの中心の縫い目にくっきりと形を現すデブケツの割れ目。絶対に臭い、親父のケツの割れ目だ。
手を洗い終えた荒熊部長は、今度は午後の眠気を飛ばすように、洗面所の水で顔を洗おうとしていた。水をじゃじゃあっとひねると、太い足を後ろにずらして顔を水の近くまで持っていく。
中腰の姿勢になった荒熊部長の真後ろに、僕はしゃがんだ。誰も来そうにない午後の男子トイレ。今しか、チャンスはない!
(ぐっ、くっせえ…!!)
体温のこもるデブケツの割れ目に鼻を押し当て、熱い穴の匂いを嗅いだ僕の第一印象が、くっせえ!だった。今週の初めに部長のケツの割れ目に指を食い込ませたときの、あの指の匂いなんかとは比べ物にならないくらいの熱い臭さだ。
けど、あれと匂いの種類は同じ。ぷーんとギンナンをすりつぶしたような、最高に強烈な糞の臭み。ズボンのウールがちくちく当たる割れ目を縦に嗅ぎ回すと、どこも臭いが、最初に見当を付けた股の上の最も深いところがすげえ臭い。
大きくて不器用な手が拭き残した軟らかいウンコの跡がスーツ越しからでもはっきりと分かる親父のケツ。53歳の恥ずかしいケツの穴の匂いを深呼吸。水が勢いよく出ていて僕の気配が分かりにくくなっているせいか、荒熊親父は黙ってケツの匂いを嗅がれている。
(くせっ、くっせえ!ここもくせえ!ここもくせえ!おお、ここもくせえのかよ!全部くせえ!うぐっ、やっぱ穴が一番くせえよお!)
いつも臭いケツの穴。ウンコした後ちゃんと拭けてないケツの穴。
毎日パンツの中でぷーんとギンナン臭く、パンツだけでなくズボンや座布団には臭いことを知られているケツの穴。ただ一人、荒熊部長だけが、ケツの穴が臭いことを知る人間だ。自分の体の後ろに付いているケツの穴が恥ずかしいくらい臭いことを豚親父は知っている。
知っているのにケツの拭き方を改善できないから、僕みたいな年下の部下にケツの穴が臭いことを見つけられたんだ。妻も子どもも知らない―と本人は思っている―臭いケツの穴のことを。ケツが臭いと女にモテませんよ、ってこの前教えてあげたのに、まだケツの穴が臭いんだ。女にモテる気が全く感じられないほどケツの穴が臭い。
数度ばしゃばしゃと顔に水をかけた親父が、さらに姿勢を低くするためにデブケツを突き出した。
どすん。僕の顔全体に53歳の男の臭いデカケツが押しつけられる。
(ぐわ、くっせえ!くっせえんだよっ!)
鼻が一瞬すごく割れ目の中に入り、熱い穴と鼻の穴が完全にぴったりとくっつき合った。目にしみるかと思うほど、強烈に下品な排泄口の匂いに興奮した僕は、鼻をぐっと深い割れ目に潜らせたままデカケツに両手を回してがっしりと抱きついた。もう偶然ではなく熱い穴と鼻の穴をぴったりとくっつき合わせて、胸いっぱいに何度も深呼吸する。
「うっ、ううっ。ううっ、ううっ、くっせえ…。」
鼻の中に豚親父のウンカスの匂いしか流れてこなくなり、あまりの臭さに僕はうめきながら小さくくせえと言った。鼻を押し当てられながらくせえくせえ言われたらさすがに傷つくかもと思って静かにしていようと頑張ったけど、すげえくせえから言ってしまった。
ああ、ここの臭さを部長に伝えるしかない。恥を知ってもらうしかない。
よく見る茶色のスーツズボン。荒熊部長の普段着は、毎日フロアを歩くとき、ケツの辺りの生地がじっとりと汗ばみ割れ目が縦の湿地帯になる。長時間椅子に座っていた尻の重みと、拭き残しの匂う臭いケツの穴のせいだ。
今、その禁断の縦エリアに鼻を突っ込んで匂いを嗅いでいるんだ。ずっとやってみたかったこと、しかも夢でやったようにデカケツに抱きついて。うう、くせえ、うう、くせえ。
荒熊部長は、ただ黙っていた。ケツをぐんと後ろに突き出した状態で、ずっと顔を洗っていた。僕の鼻が自分のケツの穴を嗅いでいる荒い鼻息が、ズボンとパンツを越えて直接ふうふうと伝わってきているはずだ。
それより何より、でかいケツにがっしりと両手を回されて顔をべったりケツの山に密着されているのだから、この状況に気づかないわけがない。
「ううっ、ううっ、荒熊部長…。ううっ、くっせえ、荒熊部長…。」
もう股間が痛い。頭がどうにかなりそう。くらくらする頭で考えついたことは、両手でズボンの上から親父のたるみきった尻たぶをむんずとつかみ、思いきり左右に割った縦エリアの、最もくぼんだ熱い穴に、僕の鼻の穴をべたあーっとくっつけて嗅ぎまくることだった。
「ぐおおっ!こうするとめっちゃくちゃ臭い!ううっ、ううっ!下痢だ!すげ、くっせえ!」
パンツの向こうからもうもうと発せられる親父のケツの穴の熱。へりまで分かるほど浮き出た穴の噴火口から、50を過ぎたデブ男だけが出せる超下品な臭い熱が出ている。噴火口に鼻柱をこすりつけていたけど、ほんとうの臭い思いをしたくて、ついに左右の鼻の穴に噴火口を交互に突き合わせて思いきり腐臭を嗅いだ。
「ぐはっ、くせっ!くせっ!くせっ!くせっ!」
洗面所の水が止まり、部長は中腰のままポケットからハンカチを取り出した。中腰のまま顔を拭いている。割れ目をがばっと開かされたデカケツは動かさない。
でもたぶんあと1分くらいしか時間はないだろう。僕はギンナン臭い割れ目で鼻を完全に挟み込んだ。もう、酸素なんてなくていい。噴火口からの臭い熱を鼻の穴だけに浴び続けたい。
そして、親父のズボンの前を探った。じわっと小便で濡れた箇所。ジッパーを見つけて下に下げ、パンツの前を触った。
「き、君…。」
野太い声がハンカチの下で焦る。ブリーフ生地のパンツの中に手を入れるのまでは勇気が出なかったけど、握った前は確実にポークビッツだった!
「ああ!荒熊部長!ポークビッツだ!臭いケツだ!好きです、荒熊部長!ううっ!ううっ!全部好きです!ううっ!うぅぅっ!」
ものすごい荒い呼吸で熱い穴の匂いを嗅ぎきった後、ズボンのジッパーを上げて僕はふらふらと立ち上がった。鼻が臭いし、顔の周りもなんか臭い気がする。自分の股間は、射精していた。
腰を引いて荒熊部長も普段の立ち姿に戻った。意外にも、部長は僕の顔をまじまじと見た。無視され、もう口も利いてくれないと覚悟していた固い気持ちは、そのときの部長の毅然とした上司の目を見てすーっと和らいでいったのを覚えてる。
「午後の眠気は、吹き飛んだかね?」
僕は訳もなく瞬間的にぴしっと背筋を伸ばした。
「はい。…ありがとうございます。」
荒熊部長は、ふんっと鼻で笑った。声はからからにかすれていたし、顔中が恥ずかしさで真っ赤に染まっていたけど、不格好な鼻だけは今日一番勝ち誇っているように見えた。
それから、部長は、ぽつりと、言った。
「…松の木の上で…、君が言ったことはほんとうだったんだな。なら、私が気をつけてみようと言ったことも、守って間違いはなさそうだ。」